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水害予測から農業DXまで。水辺の可能性を広げる”泳ぐ発電機”とは。|ハイドロヴィーナス代表 上田さんインタビュー

  • スタートアップスタジオSpirete
  • 10月14日
  • 読了時間: 7分

水の流れが“電気”へと変わる——。


水力発電技術を活用し、川や農業用水などあらゆる水域で活躍する、”泳ぐ”発電機「Hydro-VENUS」の開発を行うハイドロヴィーナス。


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今回は、代表の上田 剛慈さんに、ハイドロヴィーナスのこれまでや、これから目指す未来について伺いました。


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上田 剛慈さん


岡山大学卒業後、半導体洗浄装置メーカー勤務後に東京大学で研究員として博士号を取得。その後、株式会社アドバンテストにて国際マーケティングを経験後、2012年に株式会社エナジーフロントを設立。現在は株式会社ハイドロヴィーナスの代表取締役に着任。






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メーカー、大学の研究員、そして海外でのマーケティング職…物理学の博士号を取得しながら、様々な環境と分野で経験を積み、岡山に戻られた上田さん。


ご両親の介護をきっかけに岡山に戻った際に「岡山には技術的イノベーションを事業化するネットワークがない」と気付き、今までの知見を生かして貢献できることがないかと考えたと言います。



ー帰国され、どのような事業を始めたのですか?


私自身が研究者でもあり、半導体から物理まで、分野をまたいだ知見がありましたので、先端技術の目利きができることを強みに、まず地元企業と大学を結んで産学連携による商品開発や新事業の立ち上げなどをサポートする「エナジーフロント」という会社を創業しました。




ーご自身で会社経営をされる中で、水力発電技術「Hydro-VENUS」に出会ったきっかけや感じたことを教えてください。


岡山大学の比江島教授と出会い、創業時から参加することになりました。


水の流れを利用し、半円柱型の振り子を振動させて発電する水力発電機というのは、他とは違う個性のある技術だと感じました。生物との相性も良さそうですし、様々な分野の企業とコラボレーションが想起できる点が、他とは違うユニークさだと感じました。


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ー上田さんが参加されて、装置の形にも変化があったようですね。

はい、形も変化しました。これまでの経験で、「漂流物が絡まりやすい」「設置コストが大きくなりやすい」などの水力発電を事業化する際につまずきがちなポイントを理解していたので、メンテナンスや工事が少なくなるよう考慮して、いまの魚が泳ぐような小型装置になりました。




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平成30年豪雨をきっかけに、新たな可能性も模索



ー立ち上げ時に苦労したことを教えてください。


原発に変わる巨大な発電機を海に置く、という初期構想があったのですが、それを実現するには様々なハードルがあり困難を感じていました。


技術的にも自社だけでは耐久性のある構造は作れません。実現においても漁業関係者や航路、電力会社との調整なども大変です。実現には巨額の資金が必要ですが不透明な目標に対して投資は集まりません。


また、会社としては足元の費用を稼ぐ必要があり、どう売上を作るかが大きな悩みでした。


一時期は、助成金なしでは動けなくなってしまって、休眠状態にも陥りました。

それでも比江島教授の想いに応えたいという気持ちもあり、諦めたくありませんでした。




ー困難を乗り越えるきっかけは何でしたか?


平成30年7月に起きた豪雨がひとつの転換点となりました。岡山の真備町も大きな被害を受けたのですが、「Hydro-VENUS」を水害に役立たせることができないかと考えるきっかけになりました。


また、当時息子がAIの研究をしており、AIを取り入れることで水の流れを読み、水害の予知ができないか、という発想まで広がりました。


水害をきっかけに会社の方向性が定まり、ようやく助成金を受けられるようにもなりました。またこの構想と比江島先生の教授昇進をきっかけに、代表を引き継ぐことにもなりました。


方向性が定まって、少しずつ変わっていったと思います。




ー水害へのアプローチは続いているのですか?

はい、愛媛県の西条市で実証実験を実施しました。そこでは、山で雨が降ったあと、何時間後に下流が増えるかの予測や見える化を行いました。


ただ、災害は誰にとっても関心ごとではあるものの、いざ起こってみないとお金が出ないのが実情です。だから、日常的に使われる場所での活用も必要だと考えました。




ー現在はどのような活用方法のテストをしていますか?

農業用水の管理やDX化への活用を進めています。

農業には水のコントロールが必要不可欠ですが、今までは目視など人力で水の流れを確認しており、工数がかかっていました。


「Hydro-VENUS」を置くことで、その場に人がいなくても水がどこまできているかわかるので、農業用水管理の効率化に繋がります。



また実証実験への熱意が高かったのが、今回SX Labでもご縁があったJ-POWERさんです。


今までは人力でやっていた水量の計測や報告をリモートでできないかと相談があり、実証実験を行いました。


また最近では様々な企業から水環境に関するニーズをいただいています。

例えば、下水の老朽化の常時監視に使えないか、という声もいただいています。下水道管が破損して地面が陥没した事故(*八潮市道路陥没事故)がありましたが、日常的に流水環境のデータをとっておくと事故を未然に防ぐことができるようになる可能性があります。




ーSX Labに出会ったきっかけやSpireteの印象を教えてください。

J-POWERさんからSpireteのイベント登壇を依頼されたのがきっかけです。

実際にSX Labに参加して、Spireteメンバーが事業を理解しようとしてくれたのが印象的でした。


他のアクセラレータープログラムでは、事業への理解度が高くなかったり、よりお金が動きそうな領域への転換を求められることもありますが、SX Labで出会った皆さんはそのように一方的ではなく、私のビジョンを尊重してくれました。


最初から大きな成功を求めず、理解して伴走してくれたのがとてもありがたかったです。



8/5に開催されたイベントでの座談会の様子
8/5に開催されたイベントでの座談会の様子



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街のあらゆる場所にHydro-VENUSが存在する未来を目指して


ー今後「Hydro-VENUS」はどのようなアップデートを予定されていますか?

今回SX Labを経て投資を受けられたので、もっといろんな場面で活用できるように、発電量のパワーアップをしたいと思っています。


発電量を増やすことで、カメラを動かしたり、ドローンの充電ポートにもなり得ると考えています。


またAIを活用しながら、通信ネットワークを作っていき、いずれは情報や通信のインフラになるのが目標です。


今はまだ川についてのデータや通信網はありません。

「Hydro-VENUS」が通信のネットワークを作り、AIを活用して様々な制御・アウトプットに繋がればいいなと考えています。




ー事業を大きくしていくためにも、新たな人材を募集されていますか?

はい、フルタイムで参加してくれるメンバーを探しています。

お客さんと実際に話したり、事業開発を担ってくれるメンバーに参加して欲しいと思っています。




ー今後の展望を教えてください。

「Hydro-VENUS」が街のあらゆる場所に設置されているのが当たり前の光景となって、防災や様々なことに役立てられたらいいなと思います。



ーありがとうございました。「Hydro-VENUS」がいろんな場所で見られるようになる未来が、とても楽しみです!


■ハイドロヴィーナス HP








Spireteは、大企業・大学研究機関・フリーランス・副業人材など、多種多様な専門知識や経験を組み合わせ、ゼロからのスタートアップ創出を目指すスタートアップスタジオです。 



■ハイドロヴィーナスの活用や事業参加に関心のある方へ

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(参加希望の場合)履歴書・職務経歴書を添付の上、 contact@spirete.com までご連絡ください。



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