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微生物の力で、雑草がエネルギーに。災害時にも灯りをともす発電システムとは。|環境微生物研究所 代表 馬場さんインタビュー

  • スタートアップスタジオSpirete
  • 10月28日
  • 読了時間: 6分


雑草や野菜くず——本来なら“ゴミ”として捨てられてしまうものが、エネルギーに変わる。

そんな夢のような仕組みが、すでに現実になっています。


牛の第一胃(ルーメン)に棲む微生物を活用して、雑草や農業残さからメタンガスをつくり出すー。

このユニークな技術を開発したのが、環境微生物研究所の馬場保徳先生です。


馬場先生が開発したメタン発酵システム『エコスタンドアロン』では、廃棄されるはずだった雑草や野菜くずを原料に、電気を生み出すことができます。その電気で明かりを灯したり、携帯電話を充電することも可能です。



環境微生物研究所 GEPソリューション エコスタンドアロン


環境微生物研究所 GEPソリューション エコスタンドアロン
2023.12 石川県能美郡川北町スーパーセンター内に設置された実証第一号機。食料品売り場から廃棄される野菜くずを使ったメタン発酵を行い、メタンガス(≒都市ガス)と電気を生産する実証試験を開始。


今回は、『エコスタンドアロン』の開発と普及に取り組む馬場先生に、

環境微生物研究所を立ち上げた背景や想い、そしてこれからの展望を伺いました。



馬場 保徳先生

馬場 保徳 先生


石川県立大学生物資源工学研究所准教授。東北大学在籍時、東日本大震災で被災した経験から、雑草から電気をつくる研究をはじめ、2022年8月環境微生物研究所株式会社を設立。

馬場先生は、一度は食品メーカーの研究職に就職したものの、「やっぱり教育と研究が好きだ」と気付き、博士号を取得するため、東北大学大学院に進学され、微生物の研究と研究結果の社会実装を目指した活動を続けられています。



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東日本大震災で感じた、「地域で電気を作れる仕組み」の必要性


ー環境微生物研究所を立ち上げた背景を教えてください。

「2011年、東日本大震災が起こったとき、電気も止まって、夜の明りもない状況で、家族がバラバラになった人も連絡が取れず…今なにが起きているかもわからない、本当にひどい状況でした。


そのとき感じたのは、電気がないと何も情報を得られないし温かいご飯も食べられないんだということです。その時に、なんとか自立して地域で電気を起こせる仕組みを作らないといけないなと思いました。


何から電気を作ったらいいんだろうと外を見ていたら、雑草と落ち葉だけはありました。

これらを電気に変えられれば、この現実を変えられるんじゃないかと思い、今の研究を始めました。」





ー大震災で感じた気付きや悔しさをもとに、メタン発酵システム『エコスタンドアロン』を開発し、社会実装を進められていますが、事業として進めていく中でどんな点に苦労していますか。


「ガスや電気が作れるようになっても、災害時だけ使用する装置にお金を出す人はなかなかいないですよね。普段から使ってもらえる装置でないと、買ってもらえない。


そこで考えたのが、毎日野菜くずがでるようなスーパーマーケットでの活用です。

実際にスーパーでの実証実験も行えてはいるものの、導入費用がそれなりにかかるので、スーパー単独での導入は厳しく、補助金ありきでないと導入が難しい場合がほとんどです。


ですので、価格面での導入ハードルがひとつのネックになっています。」




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『エコスタンドアロン』は廃棄代・肥料代の削減、環境配慮にも繋がる


ー今後はどのような場所での展開を目指していますか?

「スーパーだけでなく、大きな農園さんへの導入も目指しています。

農園は普段から農作物の栽培残さの処理に大きな廃棄コストをかけているので、廃棄代が浮くぶん補助金なしでも入れられるのではと考えています。


またメタン発酵後の残さ液(=メタン発酵消化液)は、肥料として活用可能です。

肥料代も高騰しているなかで、肥料代の削減に貢献できますし、自分たちの農園で出た葉を発酵してできた発酵消化液なので、安心して肥料として活用いただけると思います。」




ーさらに、『エコスタンドアロン』の導入によって環境への配慮もできるとのこと。

「ハウス栽培では、植物の光合成を促すために、石油を燃やしてハウス内に二酸加炭素をいれています。


石油を燃やす代わりに、『エコスタンドアロン』を使用して茎や葉っぱから作ったメタンガスを燃やしてくだされば、カーボンニュートラルに繋がり、環境への配慮もできると考えています。」



※画像はイメージです
※画像はイメージです


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Spireteとの出会い、そして強力なパートナーとなるまで

環境微生物研究所とSpireteの出会いは昨年。

Spireteからイベント登壇のご依頼をしたことがきっかけでした。


そしてSX Labに参加いただき、最終審査を経て、J-POWER様からの出資が決定しました。




ーSX LabでのSpireteからの支援で、印象に残っていることがあれば教えてください。


「本当に最高のパートナーだと思ってます。

Spireteの方は、メタン発酵の技術や導入背景についてもきちんと学んでくださって、専門用語も交えながら経営会議をしてくださいます。私たちの事業に真摯に向き合ってくださる姿勢に感動しました。


さらにVC出身の方なので、お金やマネタイズの考え方にもお詳しいから、様々な視点でのサポートがあり本当に心強かったです。今後もずっと連携していただけたら嬉しいです。」




ーとっても嬉しいお言葉…ありがとうございます!今後事業を展開していくために、採用強化も考えていらっしゃいますか?


「はい、ぜひ事業に共感してくださる方に入っていただきたいです!

また技術顧問に伴走して動けるような方や、契約書など法務面のサポートをしていただける方に業務委託をお願いできると嬉しいです。」




ー今後の展望を教えてください。


「今後、南海トラフ地震など大きな災害が予想されています。想定される被災地に『エコスタンドアロン』を置いて活用いただくことで、避難所の生活が2011年より少しでも楽になればいいなと思っています。そのためにも設置できる場所を増やしていけたらと思っています。」



ー『エコスタンドアロン』が各地で電気を生み出している未来を想像すると、あたたかい気持ちになります…!馬場先生、ありがとうございました。



◾️環境微生物研究所 HP





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